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「”赤いオーロラ”を追って愛媛からアラスカへ」愛媛出身のカメラマン松本紀生さんインタビュー~前編~

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アラスカの自然を追い続ける愛媛出身のカメラマン・松本紀生さんへのインタビューの模様をお届けします。
今回は、撮影地として松本さんがアラスカという過酷な環境に拘る理由や、大きなスクリーンに写真を映し出して観客に見せる『アラスカ・フォトライブ』と呼ばれる独自の表現方法について迫ります。

※ 本記事にはプロモーションを含む場合があります。

松本紀生さんは、愛媛県松山市の出身。
現在も愛媛に暮らしているが、1年のうち約半年もの期間をアラスカで過ごしているという。
冬はマイナス50℃にもなる過酷な環境の中、オーロラの中でも珍しいと言われる”赤いオーロラ”を撮影するため、冬のアラスカにたった一人きり。60日間もキャンプをしている。

北の大自然に憧れて。アラスカを撮影し続ける理由とは?

――1年のうち約半年をアラスカで過ごされるそうですが、今はオフなんですか?

そうですね。日本にいるときはまったく写真を撮らないので、写真を撮っているのが写真家だとするとオフということになると思います。
いつも正月明けから冬のアラスカに行って、オーロラを撮影しています。2、3ヵ月したら愛媛にもどって、また6月から9月までアラスカに滞在するんですよ。これはオーロラを撮るのではなくて、アラスカの風景、なかでも動物をメインに撮影します。

――オーロラはアラスカ以外でも見られますが、なぜアラスカという過酷な環境で撮影をされるのでしょう?

それはですね、手付かずの大自然がたくさん残っているからなんですよね。
確かに自然環境は過酷なんですけど、それが逆に僕には良くて。
過酷な環境だからこそ、そこに垣間見える動物の躍動とか、それから、オーロラがより輝いて見えるんです!

それと、そういう環境で僕は一人で誰もいないところで長時間キャンプしながらシャッターチャンスを待つんですね。



出典:松本紀生写真集 DEEP ALASKA-Amazon

厳しい環境の中で何時間も何時間も待ったあと、自分が撮りたいものが撮れた時っていうのは、より充実感が得られるんですよ。
なので、僕はアラスカが好きなんです。やっぱり北の大自然に憧れますね。

ときには危険な体験も

――アラスカで撮影をする中で、危険な体験をしたことはありますか?

大怪我をしたことこそありませんが、もう少しで命を落としていたかもしれないような、すごく危ない経験をしたことは2回あります。

1回目は、まだアラスカで撮影をはじめたばかりの頃に熊と遭遇してしまったときです。
熊のことをよく知らない時期だったにもかかわらず、熊がたくさんいる山へ一人で入っていって、鹿の撮影をしていたんですよ。
茂みに隠れて息をひそめていたんですけど、そこに鹿じゃなくて熊がやってきてしまったんですよね。
目の前でバッタリ出会ったので、「殺される!」と思ったんですけど、多分熊の方も同じようなことを考えてびっくりしていたんでしょうね。そのまま逃げて行ってくれたんですよ。
それが最初の危険な体験ですね。でも、今思い返してみたら別にそんな危ない状況ではないんです。熊もビックリしただけなので、そのまま逃げてくれてもおかしくない状況ではあります。

もう一つは冬のキャンプの時。僕はいつも氷河の上に一人で「かまくら」を作ってキャンプするんですけど、その時は、ものすごい吹雪だったんですね。
吹雪のときって強風によって、かまくらの壁がドンドンドンドン外側から削られていくんですよ。
その時は風があまりにもキツ過ぎたので、かまくらの中に逃げ込む他ありませんでした。
ずーっとかまくらのなかで息をひそめてたんですけど、ドンドンドンドン壁がうすくなっていくのが音でわかるんですよ。
もしそこで、かまくらの壁に小さな穴でも開いてしまったら、小さな穴から粉雪が吹き込んできて、雪に埋もれてしまうような危険な状況でした。
でも、丸2日間強風が吹いた後、かまくらに穴が開く前にピタッと風が止んでくれたので、なんとか助かったんです。
その経験から、今は、壁の厚みが2メートル以上あるような大きなかまくらを作るようにしています。
作る期間も、以前は3日か4日だったんですけど、今は5日間かけて大きな大きなかまくらをつくるようにしていますね。

思い通りにはならない、自然を相手にした撮影の難しさ

――自然を相手にした撮影は、思うようにいかないことがあると思うんですけど、そういう時はどうしていますか?

そういうときばっかりなんですよ。
自然相手だから、こっちの思う通りにいかないことばかりです。

例えば動物の撮影をするとき、ちゃんと動物が見られるという場所や時期の下調べをしていても、実際に行ってみると現れないものなんですね。
クジラの撮影をするときは、海が荒れてたらボートが出せないからテントの中で過ごします。
夏は1か月くらいキャンプしますけど、実際海に出られるのって、そのうち2週間くらいなんですよ!
海に出ている時もそうです。クジラが近くに来ても、こっちの思うような動きはしてくれません。だから、ひたすら待ちますね。

オーロラにしてもそうなんです。
冬のオーロラの撮影は、毎回50日間かまくらでキャンプするんですけど、ちゃんとオーロラが出てくれる日って5日間もないんですよ。
他の日は雪かきをしたり、本を読んだりしてチャンスが来るのを待つしかありません。そんなもんです。

もうだから、辛抱するしかないですね。我慢強く続けるしかないですよ。
こっちが何か頑張って状況変えられるんだったら何かやりますけど、そういうわけにもいかないですから。

アラスカ・フォトライブ」という独自の講演を行う理由


写真家が作品を世間に発表する場として一般的なのが「展示会」だ。
ギャラリーに写真が印刷されたパネルを置いて、鑑賞者は静かにそれを見る。
写真家と鑑賞者の交流が少ない、どちらかと言うと”一方通行”の表現方法と言えるだろう。
松本さんは、大きなスクリーンに写真や動画を映し出しながら撮影時のエピソードを語る「アラスカ・フォトライブ」という独自の方法で写真を発表している。

大学生の頃、アラスカに渡って、アメリカ人の家族と住んでた時に、この講演方法を思いついたんです。
向こうの人は、週末になると友達を家に呼んで、ご飯を食べて、その後にちょっとゲームをする、みたいなあったかいホームパーティーをよくやるんですよ。
一緒に住んでいた人たちは、ホームパーティーの一環としてスライドショーをやってたんです。

昔あった、「スライド映写機」ってわかります?丸い容器にスライドを一枚一枚入れて手動でガッチャンガッチャン切り替えるやつ。
あれを使って、写真を家の白い壁に映しながら「いやぁ、先週末カヤック漕ぐ旅に行ったんだよ」みたいな感じで、みんなでワイワイお喋りをしていたんです。
その雰囲気がすごく良くて。「あったかくて、楽しくていいなぁ」って思ってたんですよ。
その頃から、これを将来もっとエンターテインメントに仕立て上げて、いろんな人に見てもらえたら楽しいだろうなって想いがずっとあったんですよ。

それから、だんだん自分で撮影した写真が増えて、本気でそういう表現について考えようって思い始めたときに参考にしたのが、僕が大好きな「さだまさし」さんのライブだったんです。
僕は、中学のときからさだまさしさんが大好きで、よくライブに行ってたんですけど、さだまさしさんって、トークがとっても楽しくて上手なんですよ。
歌を2、3曲歌ってトークを何十個もして、みたいなその繰り返しなんですけど。
歌で真剣に聴かせて、トークで笑わせて、心をほぐして、また歌でしんみりさせる、っていうそのバランスがすごく絶妙なんですよね。「これだ!」と思ったんです。
僕は写真をみてもらって、しゃべって、写真だけじゃなくて映像なんかも入れたり、音楽も入れ込んだりして、できるだけお客さんが見て、聞いて楽しめるようなスライドショーをつくり上げてきたのが「アラスカ・フォトライブ」なんです。
まだまだですけど、昔経験したホームパーティーのあたたかさと、さだまさしさんのライブの面白さを取り入れて、もっとお客さんが楽しめるものを頑張って作り上げているところですね。

――「フォトライブ」の魅力は何ですか?

「フォトライブ」って、やっていて楽しいんですよ。
写真展は、写真を飾って見てもらうだけじゃないですか。僕もたまにやるんですけど、それも自分でやるわけじゃなくて頼まれたときにだけしかやらないんです。
写真展で写真家は何をするかというと、会場に座ってるだけなんです。
写真を見てくれたお客さんがたまに「良かったです」って僕に話しかけてくれるのを待つ。
僕としては、それがすごい居心地悪くて、何をしてんだって感じなんですよね。

でも、フォトライブはそうじゃなくて、写真とかビデオを見たお客さんの反応がダイレクトに返ってくるわけですよ。
小学校なんかでフォトライブをやると、写真が一枚切り替わるごとに「ウワァーッ!!」って歓声が返ってきて、体育館中が子供の歓声で包まれたりするんですよ。
だから、僕もやってて楽しいし、見てる人が喜んでくれてるって実感出来るんですよね。これはずっと続けていきたい活動だなと思います。

まとめ

松本さんの写真を見てみたいという方は12月8日発売の写真集「DEEP ALASKA(ディープアラスカ)」をぜひご覧ください。
23年間、撮影し続けてきたアラスカの自然風景やオーロラの写真が収録されていますよ。

写真集の購入はこちら!

また、写真集の発売を記念して、12月15日には「アラスカ・フォトライブ」が開催されます。
美しい写真や映像と松本さんのトークで、素敵な時間を過ごしませんか?

チケットの購入はこちら!

【イベント詳細】
写真家 松本紀生スライドショー アラスカフォトライブ
開催日:2017年12月15日(金)
開場/18時30分 開演/19時00分
開催場所:松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
入場料(全席自由)/前売り1,000円(当日1,500円)
デュークショップ、いよてつ髙島屋、フジグラン松山点、ローソンチケット他にてチケット販売中!

インタビューは後編へ続きます。
後編では、オーロラに関する気になる疑問や、松本さんの出身地である愛媛県について伺いますよ。
次回更新をお楽しみに!

松本紀生 (まつもとのりお)
1972年愛媛県松山市生まれ。
立命館大学在学中に写真家の故 星野道夫氏の影響を受け、同校を中退。
アラスカ大学へ編入し、独学でキャンプ術や撮影技術を学ぶ。
現在も愛媛県で暮らしながら、1年のうち半年はアラスカに滞在し、アラスカの大自然を写真におさめている。

ホームページ:http://www.matsumotonorio.com/index.html
2冊目となる写真集「DEEP ALASKA(ディープアラスカ)」が発売中。

参考:プロフィール of 松本紀生公式サイト/Norio Matsumoto Photography

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この記事を書いた人: 乾燥剤
アラサーに片足を突っ込んでいる乾燥剤。ドライなふりしてますが、けっこう情脆い乙女です。
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