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愛媛出身のプロハープ奏者古佐小基史さんインタビュー~前編~

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愛媛出身のプロハープ奏者・古佐小基史さんのインタビューの模様をお届けします。
今回は、古佐小さんとハープの出会いや、活動拠点としてアメリカという地を選んだ理由について迫りました。

※ 本記事にはプロモーションを含む場合があります。

古佐小基史さんは愛媛県松山市出身。現在はアメリカのカリフォルニア州サクラメントを活動拠点としている。
ハープの演奏技術はほぼ独学で習得。
2007年の「Lyon-Healy Jazz & Pop Harp Competition」において、日本人としては初めてペダルハープ部門で二位に入賞。

アメリカのハープ専門誌「ハープコラム」ではアドリブの技術で高い評価を受けている。
活動拠点のアメリカはもちろん、日本でもコンサートを行うなど世界を舞台に精力的に活動している。

参考:古佐小 基史(こさこ もとし)

ハープとの出会い

――ハープと出会ったきっかけは何ですか?

アメリカにわたってから、地元のオーケストラで「誰かハープを誰か弾いてくれないか」、という話があったんです。

もともと僕はギターをやっていて、「ギターが弾けるんだからハープもやったらできるんじゃないの?」みたいな感じで始めました。
高校の吹奏楽部なんかでよくあるじゃないですか、誰か一人ハープやりなさい、みたいな。あのノリに近いですよね。

それからハープを持っている方から弾いてないハープを借りて、演奏を始めたのがきっかけです。
ありがちな出会いと言えばありがちな出会いかもしれないですね。

すべてをリセットするため、アメリカへ

――現在アメリカにお住まいということですが、アメリカに住もうと思った理由・現在もアメリカに住み続けている理由は何ですか?
アメリカへ移ろうと思った最初のきっかけは、肩書きとか資格とかそういったものだけで評価されない社会で活動したいと思ったことですね。

当時、日本で大学を出て資格を持って仕事をしていたんです。
保険士と看護師の資格を取って東京大学の医学部の保健学科を卒業したのですが、当時4年制大学を卒業している看護とか保険の資格を持っている人が少なかった、っていうのと4年制大学の教育機関を新設するという動きがかなりありまして、時流に乗った選択だったんですね。

そこから研究者として仕事を広げていくっていう門がすごく大きく開いていた時代にそういうコースをとったんですが、逆に言うとですね、学歴とか資格を取って社会に出れば、まあまあ有利なんです。
特に日本の場合は学歴が物を言いますので。
自分にとって有利なところで、学歴や資格に守られて仕事をする、っていうのは、わりと順当な、賢い選択ではあるんですけども、それをするとなんかこう自分自身の価値を見られていないというか……。
そういう社会で優遇され続けていると嫌な奴になる方もいるじゃないですか。人間がダメになっていくという気がしたんです。

やっぱり肩書や資格なんか全然関係なく、実力だけで一人の人として評価されるような世界に憧れというのがありまして。
一回すべてをリセットして実力だけで勝負していくために、海外に出てみるのもいいのかなと思ったのが最初のきっかけですね。

で、今もなぜアメリカに住んでいるかと言いますと、行ったら結構肌があったということでして。
現地の女性と結婚して所帯を持ったという部分もあります。
あとは、5年ぐらい前からファームをしているんです。山羊を飼ったり、鶏を飼ったり、野菜を作ったりというのを自然の中でやるライフスタイルをはじめたことも理由ですね。
そういう基盤ができるとなかなか離れられなくなります。ファームなんて何十年単位の時間をかけて出来上がっていくような世界ですから。
そういったことを実現するために腰を据えてアメリカに住んでいるという感じですね。

音楽家としてなによりも大切なのは「継続」

――古佐小さんのように素敵なハープ演奏者になるためには、どのような努力が必要ですか?
努力……。そうですね。
1つは、やっぱり音楽に“とりつかれている”というか、魅入られている必要はあるのかなと思います。
よく言うじゃないですか、ミューズ(音楽の女神)に魅入られるというか。音楽にはまっている必要はあると思うんですよね。
音楽の素晴らしさに魅入られていれば、自分の演奏に不安を持ったり、迷ったりして、ちょっとくじけそうになっても音楽を続けることができます。
努力とは違うかもしれませんが、「継続していく」ということが、まず1つ大切なことだと思いますね。

それと、「目標を高く持つ」ということだと思うんです。
目標を高く持つっていうのは大変なんですよ。やっぱり高い目標と比べると自分がいかにダメかっていうのがわかりますから。
高い目標を掲げながら音楽活動をしていくことって、矛盾している部分はあるんですね。
ものすごく高みを目指していて、そこに到達できていないのが分かっていても、今できていることだけを発表しなければならないわけですから。
目標を高く持ちながら、そういった矛盾との折り合いをつけて続けていくということは、難しいですが、重要だと思いますね。

かといって、天狗になるとそれ以上成長できなくなってしまう。自信と謙虚さのバランスを崩すと先が行き詰ってしまうんです。
そういった意味では、僕の中で矛盾との葛藤という努力は結構あったのかなと思います。

あとは、今やっていることが上手くできるようになったら、今度は別の形で音楽と関るように推移していかなければならないと思っています。
今まで上手にできていることをやめて、やっていないことに転換することには、怖さがあるんです。
でも、そこは、やっぱり「違うな」と気づいたときに早めに、大胆に方向転換できる勇気が必要だと思いますね。

例えば僕は、クラシックでキャリアを始めたんですけど、クラシックで「ちょっとどうかな」と思った時に、例えばジャズや作曲に転換しました。
こういったことは、精神的には少ししんどい選択なんですけども、努力だったのかなという気はしますね。

日常生活と音楽活動に一貫性をもたせることが「継続」の鍵

――深いですね。続けるって本当に簡単なようで全く簡単ではありませんからね。

そうですね。でも、ある意味続ければなんとかなるっていう部分もありまして。
「継続は力なりという」、僕が昔柔道をやっていた時に恩師がよく言っていましたが、その通りで。
ちょっと時間がかかる場合はありますけど、続けていれば、いずれは自分なりの音楽とのかかわり方というものが見えてくるんですね。
やめちゃうとそこで終わりなんです。
自分の才能であるとか、好きな音楽であるとか、やりたいことがだんだんはっきりしてくると、人生を豊かにしてくれる音楽とのかかわりが見えてくると思うんです。

「上手くなければダメ」とか、「このレベルでできないならやらないほうがいい」とか思い詰めて考える方もいますけど、人生って音楽だけではないんですよ。
例えば、家庭のこともありますし、音楽以外の仕事をしている方もいるかもしれません、他にも社会との関わりもあります。「音楽」っていうのはたくさんある日常生活の中のごく一部なんですね。
だから「音楽」のことだけを考えるよりも、生活全体を豊かにするかっていうことを大きな目的として考える方が良いと思うんです。
その目的の中で「音楽」っていうものがどう活きてくるのかというふうに考える。

僕は結果として演奏家としてやるのが良かったんですが、必ずしも皆がそうではないですし。
例えば、大けがをしてしまってですね、ハーピストでいられなくなったときにどういう生き方をしようかっていうことも、僕は考えているんですよ。
だから、その時に今やっていることが途切れないように。他の生活のすべてと音楽活動に、ある程度一貫性を持たせるように気を付けてはいます。

海外と日本のリスナー、反応の違いは?

――世界中様々なところで演奏されていると思いますが、日本と海外とで、お客さんの反応の違いを感じることはありますか?
僕が演奏したことがあるのは、アメリカの(といっても広くて南部と西部と東部が違うんですけど)西海岸、カナダ、ブラジル、オーストラリアです。
ものすごく盛り上がって下さるのはブラジルの方ですね。皆さんのイメージ通りかと思います。

アメリカの方の場合、受ける曲が違います。ジャズっぽい感じだったり、ブルースだったりっていうのがアメリカ人の方にとっては、日本で演歌を聞くような感じで受けているっていうか。
コネクトできるような感じがします。カナダなんかも、わりとそういう傾向があるのかなと思いますね。

日本の方は静かに聞いてくださいますね。
「良かったな」と思ってくださっても、「あまりよくないな」と思ってくださっても、きちんと反応してくれます。
あまり気に入らなかったけれど丁寧に拍手してくれているのか、本当によかったのかっていうのが分かりにくいといえばわかりにくいですが、すごく静かに真剣に音楽を聴いてくださるのが日本のリスナーの方の特徴です。

海外のリスナーは場を作ってくださるので、やりやすい部分もあります。
しゃべったりする人はいないんですけど、演奏が終わった後に「いい演奏だ」と思ってくださった方が大きくため息をついてくれたり、反応が分かりやすいんですね。
そういう意味では海外の方、欧米の方の反応のほうが分かりやすいのかなと思います。

――海外では、立ち上がって拍手されるような方もいらっしゃいますか?

そうですね。コンサートの最後のほうになるとスタンディングオベーションっていうのはありますね。

――日本のコンサートでスタンディングオベーションはほとんど見られないですもんね。
特にハープのコンサートでスタンディングオベーションっていうのはなかなかね。日本はアンコールがありますけどね。
向こうの方は、演奏への反応をはっきりと示してくださるんで、ある意味やりやすい部分もあります。

まとめ

後編では、古佐小さんの出身地である愛媛、松山について、そしてこれからの活動についても伺いました。
古佐小さん考案の愛媛を世界にアピールできる新たな「構想」は必見です!
次回更新をお楽しみに♪

古佐小基史(こさこもとし)
1971年生まれ。愛媛県松山市出身。
高校生の頃にエレキギターと出会い、東京大学医学部に入学後はジャズギターにのめりこんだ。
ジャズ・ギタリストとしての限界を感じていた頃、ハープと出会う。
ギタリストとしての経験をもとに「ジャズ・ハープ」の演奏をほぼ独学始める。
2007年の「Lyon-Healy Jazz & Pop Harp Competition」において、日本人としては初めてペダルハープ部門で二位に入賞。
アドリブの技術が高く評価されており。アメリカのハープ専門誌「ハープコラム」でも高い評価を受けている。
活動拠点のアメリカはもちろん、日本でもコンサートを行うなど世界を舞台に精力的に活動している。

ホームページ:http://www.harpmusician.com/

Special thanks

オフィス ナテュレ代表・藤山健さんにご協力いただき、今回のインタビューを実現することができました。
この場をお借りして、御礼申し上げます。

藤山健……オフィス ナテュレ代表/プロジェティスタ。愛媛県にカフェが無い時代から地域密着型カフェ「ナテュレ」、「ブルーマーブル」を展開した愛媛の「食」の先駆者。
SCAAアメリカスペシャリティコーヒー協会カッピングジャッジ(コーヒー鑑定)や農林水産省6次産業プランナーとして活躍、松山市の調理製菓専門学校では講師も務めている。
現在では、人と人、地域と地域を繋ぎ、食だけに留まらない愛媛の魅力を世界中に発信している。
オフィス ナテュレ-Facebook: https://goo.gl/yBY9G7

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